この教科書について
読者として、Linux・ネットワーク・コマンドラインの基礎があるエンジニアを想定しています。Google Cloud の経験は不要です。各章は「概念解説 → 図解 → ハンズオン → つまずきポイント → 理解度チェック」で構成され、Google Cloud Professional Cloud Architect(PCA)試験ガイドの 6 セクションを全章でカバーします。第 I 部(第 1〜4 章)だけは順番に進めることを推奨します。
必要なもの: Google アカウント、Google Cloud の無料トライアル($300 クレジット・90 日間)または課金アカウント、ブラウザ(ハンズオンは Cloud Shell 前提のためローカル環境構築は不要)。各ハンズオンには費用の目安と後片付け手順を明記しています。
情報の鮮度: 本書は 2026-08 時点の公式ドキュメントに準拠しています。制限値・料金・SLA・試験内容は変わるため、実装前・受験前に各章末の参考リンクから最新のドキュメントと認定ページを確認してください。
PCA 試験ガイドとの対応
PCA 試験(2 時間・50〜60 問・多肢選択式)は次の 6 セクションで構成されます。本書の章との対応は次のとおりです。試験の 20〜30% はケーススタディ(第 18 章)に基づいて出題されます。
| 試験ガイドのセクション | 出題比率 | 対応する章 |
|---|---|---|
| 1. クラウド ソリューション アーキテクチャの設計と計画 | 約 24% | 第 1 章、第 3 章、第 4 章、第 5 章、第 6 章、第 7 章、第 8 章、第 9 章、第 10 章、第 11 章、第 12 章、第 17 章、第 18 章 |
| 2. ソリューション インフラストラクチャの管理とプロビジョニング | 約 15% | 第 3 章、第 4 章、第 5 章、第 6 章、第 8 章、第 9 章、第 11 章、第 12 章、第 13 章、第 18 章 |
| 3. セキュリティとコンプライアンスを考慮した設計 | 約 18% | 第 2 章、第 13 章、第 14 章、第 18 章 |
| 4. 技術プロセスやビジネス プロセスの分析と改善 | 約 18% | 第 15 章、第 16 章、第 17 章、第 18 章 |
| 5. 実装の管理 | 約 11% | 第 1 章、第 10 章、第 16 章 |
| 6. ソリューションとオペレーションの信頼性の確保 | 約 14% | 第 7 章、第 15 章、第 16 章、第 18 章 |
目次
第 I 部 基礎編
第 1 章
Google Cloud の全体像と開発環境セットアップ
リージョン / ゾーンとリソース階層の全体像を掴み、予算アラートで課金事故の保険を張ってから、Cloud Shell と gcloud で全章共通の足場プロジェクトを整える。PCA 試験の形式もここで押さえる。
第 2 章
IAM とリソース階層 — 権限設計の基礎
組織 → フォルダ → プロジェクトの階層とポリシー継承を土台に、事前定義ロール・鍵なしサービスアカウント・組織ポリシーで最小権限を設計する。
第 3 章
VPC ネットワーキングの基礎
グローバル VPC × リージョナルサブネットの二層構造を土台に、ファイアウォール・ルート・Cloud NAT で通信の境界と出口を設計する。
第 4 章
Compute Engine — 仮想マシンとインスタンスグループ
マシンファミリーと Spot VM の選定、Hyperdisk とスナップショットの設計、そして MIG によるオートヒーリング・オートスケーリング・ローリング更新まで、IaaS 運用の型を身につける。
第 II 部 アプリケーション実行基盤
第 5 章
Cloud Load Balancing・Cloud DNS・Cloud CDN
L7/L4・プロキシ/パススルー・外部/内部・グローバル/リージョンの 4 軸で LB を選び、バックエンドサービス・ヘルスチェック・CDN キャッシュ・DNS ルーティングポリシーでグローバル配信の前段を設計する。
第 6 章
GKE — マネージド Kubernetes
Autopilot と Standard の選択、Gateway API での公開、スケーリングの階層、Workload Identity。GKE 設計の勘所をハンズオンで掴む。
第 7 章
Cloud Run とサーバーレス — コンピューティングの選び方
リビジョン・オートスケール・2 つの課金モデルという Cloud Run の心臓部を押さえ、functions / jobs とイベント駆動、CE・GKE との選び分けをハンズオンで学ぶ。
第 III 部 ストレージとデータ
第 8 章
Cloud Storage — オブジェクトストレージ設計
ロケーションとストレージクラスの 2 軸でバケットを設計し、ライフサイクル・Autoclass・バケットロックでコストと保護を自動化。署名付き URL と転送手段の選択も押さえる。
第 9 章
リレーショナルデータベース — Cloud SQL・AlloyDB・Spanner
Cloud SQL の HA・リードレプリカ・PITR、AlloyDB の位置づけ、Spanner の外部整合性とインスタンス構成を押さえ、要件から RDB を選び分ける設計軸を身につける。
第 10 章
NoSQL とインメモリ — Firestore・Bigtable・Memorystore
Firestore・Bigtable・Memorystore の守備範囲と行キー設計・キャッシュパターンを押さえ、エミュレータで課金ゼロの開発ループを回す。ストレージ全製品の選択地図つき。
第 11 章
データ分析基盤 — BigQuery・Pub/Sub・Dataflow
BigQuery のストレージ・コンピュート分離とパーティショニング、Pub/Sub の確認応答とデッドレター、Dataflow までのストリーミング分析基盤を設計し、bq と gcloud で体験する。
第 IV 部 接続とセキュリティ
第 12 章
ハイブリッド接続と VPC 設計パターン
HA VPN と Interconnect の選択軸、共有 VPC・ピアリング・PSC・NCC の使い分けを整理し、2 つの VPC を HA VPN + BGP で実際に接続して確かめる。
第 13 章
セキュリティ設計 — 鍵・境界・ゼロトラスト
暗号化 3 段階と Cloud KMS・Secret Manager、組織ポリシーと VPC Service Controls の境界、IAP・Cloud Armor・SCC まで、多層防御を鍵と踏み台レス SSH の実装で体得する。
第 14 章
コンプライアンスとデータ保護
HIPAA・PCI DSS・GDPR を設計に翻訳し、Assured Workloads で規制を強制。Sensitive Data Protection の PII 検出・匿名化と Cloud Audit Logs の証跡設計を手を動かして学ぶ。
第 V 部 運用と信頼性
第 15 章
オブザーバビリティと SRE
Cloud Monitoring・Logging で指標とログの経路を設計し、SLI / SLO / エラーバジェットとバーンレートで信頼性を数値運用する。カオスエンジニアリングと DiRT で備えを検証する視点まで。
第 16 章
IaC と CI/CD — Terraform・Cloud Build・デプロイ戦略
Terraform でインフラをコード化して state を GCS に置き、Cloud Build から Cloud Run への自動デプロイを組む。ローリング / Blue-Green / カナリアの選び分けまで押さえる。
第 17 章
移行・DR・コスト最適化
移行の 4 フェーズと移行パターン、ツールの対応表と転送計算、RTO / RPO から選ぶ DR パターン、CUD・SUD・ライトサイジング・請求エクスポートによるコスト最適化を学ぶ。